1. はじめに

甘くてやわらかく、炒め物や天ぷらにもぴったりな「伏見とうがらし」。
京都の伝統野菜として知られ、見た目は細長くても辛くなく、やさしい味わいが人気の夏野菜です。加熱するととろけるような食感になり、苦みやクセも少ないため、お子さまや辛いものが苦手な方でも食べやすいのが特長です。
そんな伏見とうがらしは、実は家庭菜園でもとても育てやすい野菜のひとつ。
プランターでも地植えでもOKで、一度育て始めれば夏から秋にかけて長期間収穫を楽しめるのが魅力です。
基本を押さえれば初心者でもしっかり育てられるので、「初めての野菜栽培に挑戦してみたい!」という方にもおすすめです。
この記事では、伏見とうがらしの特徴や栽培スケジュール、育て方のステップ、失敗しないコツまでをわかりやすく解説していきます。
家庭で育てて、収穫したての新鮮な甘とうがらしを味わってみませんか?
2. 伏見とうがらしの特徴と魅力
伏見とうがらしは、京都の伏見地区を中心に古くから親しまれてきた伝統的な甘とうがらしの一種です。
見た目はスリムで少しクネッと曲がった形をしており、色は鮮やかな緑色。唐辛子のように見えますが、辛みはほとんどなく、ほんのりとした甘みがあるのが特長です。
加熱調理すると、皮がやわらかくなり、とろけるような食感に。炒め物や焼きびたし、天ぷらなど、どんな料理にも使いやすく、夏の家庭料理に大活躍してくれる万能野菜です。
また、伏見とうがらしは収穫までの期間が比較的短く、次々と実がつくため、家庭菜園向きの品種ともいえます。
プランターでも十分に育てられ、草丈も60cm前後とコンパクトなので、ベランダ菜園にもぴったりです。
さらに、同じ仲間である「万願寺とうがらし」よりもやわらかく、筋が少ないので食感が良いという点も人気の理由。
おまけに、暑さに強く病気にも比較的強いため、ガーデニング初心者でも安心してチャレンジできます。
味よし、育てやすさよし、そして収穫量も多い。
伏見とうがらしは、まさに家庭菜園にぴったりの“優等生”な京野菜です。
3. 栽培スケジュールと準備
伏見とうがらしは、春に植えて夏から秋まで長く収穫できる夏野菜です。
比較的栽培期間が長く、次々に実がなるため、じっくり楽しめる家庭菜園向けの品種といえます。
まずは、基本のスケジュールと育てる前の準備を確認しておきましょう。
3-1. 栽培スケジュールの目安
伏見とうがらしは、種からでも苗からでも育てられる野菜です。
初めての方や手間をかけたくない方は、市販の苗から始めるとスムーズです。
- 種まき(育苗):3月中旬〜4月中旬ごろ
温暖な地域なら4月中旬ごろまでにまいて、5月に植え付けます。 - 苗の植え付け:5月上旬〜中旬
気温が安定し、遅霜の心配がなくなったタイミングがベスト。 - 収穫時期:6月下旬〜10月頃まで
早ければ6月末には実がつき始め、秋まで長く収穫を楽しめます。
3-2. 栽培環境と場所の選び方
伏見とうがらしは日光が大好きな野菜です。
1日5〜6時間以上は直射日光が当たる場所で育てるのが理想です。
風通しがよく、水はけの良い土壌であれば、地植えでもプランターでも育てることができます。
プランターで育てる場合は、深さ25〜30cm以上、幅60cm以上のものがおすすめ。
1つのプランターに2株までが目安です。
3-3. 栽培に必要なもの
苗または種
ホームセンターや園芸店で「伏見とうがらし」の苗を購入できます。
元気で葉の色が濃く、茎がしっかりしているものを選びましょう。
種から育てる場合は、室内で育苗トレイと育苗ポットを使って管理します。
野菜用培養土(または土づくり材料)
プランター栽培なら市販の野菜用培養土で十分です。
地植えの場合は、あらかじめ堆肥・石灰・元肥を混ぜておき、酸性土壌を中和しておきましょう。
プランターまたは畑スペース
前述のとおり、深さ25cm以上・幅60cm前後のプランターでOK。
地植えの場合は株間を40〜50cm程度あけて、根がしっかり張れるようにしておきます。
支柱・誘引用のひも
伏見とうがらしは草丈が高くなるため、成長に応じて支柱を立てて茎を固定するのが大切です。
倒伏や実の重みによる枝折れを防ぎ、風通しをよくすることで病気予防にもなります。
肥料(元肥・追肥用)
元肥としてあらかじめ土に混ぜ込むほか、生育期には月1回程度の追肥が必要です。
緩効性の粒状肥料や、液体肥料を併用すると、実つきがよくなり、甘くてやわらかい実に育ちます。
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4. 育て方の流れ(種まき〜収穫まで)

伏見とうがらしは、栽培の手順さえ押さえれば初心者でもじゅうぶん育てられる野菜です。
ここでは、種まきから収穫までの一連の流れを、順を追ってわかりやすく解説します。
種から育てる場合は、3月中旬〜4月中旬ごろにポットや育苗トレイにまき、**発芽適温20〜25℃**を保つようにします。
発芽には1週間前後かかるので、その間は乾燥させないようこまめに水を与えましょう。
本葉が4〜5枚になったら、定植の準備をします。
苗から始める場合は、5月上旬〜中旬ごろ、気温が安定してから植え付けるのがベストです。
プランターでも地植えでも、株間40〜50cmをあけて植え付けます。
根鉢を崩さずに、あらかじめ掘っておいた穴に苗をまっすぐ立て、植えたあとたっぷり水を与えましょう。
この段階で、支柱を立てて軽くひもで固定しておくと倒伏防止になります。
植え付け後は、土の表面が乾いたタイミングで水をたっぷり与えるのが基本です。
過湿は根腐れの原因になるので、水の与えすぎには注意しましょう。
生育が安定してきたら、2〜3週間に1回を目安に追肥を行います。
液体肥料や緩効性肥料を併用することで、実のつきが良くなり、やわらかく育ちます。

草丈が伸びてくると、枝が倒れたり実の重みで折れやすくなるため、支柱でしっかり支えてあげましょう。
また、主枝から出た枝が込み合ってきたら、風通しを良くするために不要なわき芽を適度に整理(整枝)します。
このひと手間で、病気の予防にもつながります。
花が咲いたあと、1〜2週間ほどで細長い実が育ってきます。
長さ10〜15cm程度、やわらかくツヤのあるうちに収穫するのがベスト。
放っておくと実が硬くなったり、種が大きくなって食味が落ちてしまうため、早め・こまめに収穫するのがコツです。
収穫の際は、ハサミで枝元から切り取るようにし、株を傷つけないよう注意しましょう。
適度に収穫を繰り返すことで、株が疲れにくくなり、秋まで長く実をつけてくれます。
5. 甘くやわらかく育てるためのコツ
伏見とうがらしの最大の魅力は、辛くなく、やわらかくて甘みのある実。
その特徴をしっかり引き出すためには、日々のちょっとした栽培管理が大切です。
ここでは、甘くてやわらかい伏見とうがらしに育てるためのポイントを紹介します。
①肥料は切らさず、こまめに追肥
伏見とうがらしはたくさん実をつける分、養分も多く消費する野菜です。
特に、実がつき始めてからの時期は、月2回程度を目安に追肥を行いましょう。
液体肥料を1週間おきに薄めて与える方法も有効です。
栄養不足になると、実が硬くなったり、実の数が減ったりする原因になるので、収穫のタイミングに合わせてしっかり補いましょう。
②水の与えすぎ・不足に注意
土が乾きすぎると実がかたくなり、逆に過湿になると根腐れを起こしやすくなります。
ポイントは「土の表面が乾いたらたっぷり与える」というリズム。
特に真夏は乾きやすいため、朝の涼しい時間帯にたっぷり水をやるのがおすすめです。
③実が大きくなりすぎる前に収穫する
伏見とうがらしは、早めに収穫することでやわらかく美味しい状態を保つことができます。
実が大きくなりすぎると、種が硬くなり、果皮も厚くなって筋っぽくなるので要注意です。
目安は10〜15cmほどの長さ、手で軽くしならせて柔らかさを感じたタイミングで収穫すること。
実を収穫すると株のエネルギーが次の実に向かうため、収穫はこまめに繰り返すのが理想です。
④摘心と整枝で風通しをよく保つ
草丈が30〜40cmを超えてきたら、主枝の先端を摘んでわき芽の成長を促す(摘心)と、株が横に広がり実の数も増えていきます。
また、葉や枝が密集しすぎていると蒸れて病気の原因にもなるため、内側の葉や混み合った枝は軽く取り除きましょう。
風通しを良くすることで、実の質も安定し、害虫や病気のリスクも軽減されます。
⑤害虫・病気は早期発見・早期対策
アブラムシやハダニ、うどんこ病などが発生することもありますが、早期に見つけて対処すれば大きな被害にはつながりません。
定期的に葉の裏をチェックし、異変があれば牛乳スプレーや家庭菜園用の殺虫剤・殺菌剤などを使って対策しましょう。
予防のためには、風通しと日当たりを確保し、水は根元だけに与えることが基本です。

家庭菜園に挑戦してみたい方へ|シェア農園という選択肢
「野菜や果物を育ててみたいけど、庭や畑がない…」
そんな方には、区画を借りて野菜を育てられる“シェア農園“がおすすめです。
必要な道具も揃っていて、栽培のアドバイスを受けられる農園もあるので、初心者でも安心して始められますよ。
6. まとめ|伏見とうがらしは育てやすく食べて美味しい万能野菜
伏見とうがらしは、育てやすさ・収穫量・食べやすさの三拍子がそろった、家庭菜園にぴったりの野菜です。
辛くない甘とうがらしなので、お子さまから年配の方まで安心して楽しめ、炒め物や煮浸し、天ぷらなどどんな料理にもマッチします。
栽培のポイントさえ押さえれば、プランターひとつでも長期間にわたって収穫できるのが魅力。
特別な道具や広いスペースがなくても、日当たりのよい場所と少しの手間があれば立派に育ちます。
また、実をこまめに収穫することで株が元気を保ち、次々と新しい実をつけてくれる育てがいのある野菜でもあります。
家庭で育てた伏見とうがらしの、採れたてならではのやわらかさと甘さは、市販品ではなかなか味わえません。
ぜひこの機会に、あなたの家庭菜園に伏見とうがらしを加えてみてはいかがでしょうか?
「育てる楽しさ」と「食べる喜び」の両方を届けてくれる、素敵な夏野菜です。