1. はじめに

ホクホクよりもねっとり系が好き、という方に絶大な人気を誇るさつまいも「安納いも」。
甘さが非常に強く、加熱すると蜜がにじむような食感と濃厚な風味は、まさに“スイーツ”のような美味しさ。
焼き芋好きの間では定番中の定番とも言える、極上のさつまいもです。
そんな安納いも、実は家庭でも育てられることをご存じでしょうか?
プランターや小さな畑でも十分に栽培可能で、ちょっとしたコツを押さえれば、市販品に負けないほど甘くて濃厚な味わいを自分で育てて楽しむことができます。
本記事では、安納いもを家庭で栽培するための基本的なスケジュール、植え付けや管理のコツ、収穫後に甘さを最大限に引き出す熟成方法まで、初心者にもわかりやすく解説します。
秋には、自分の手で育てた芋を掘り出し、焼きたての香ばしい香りとともに味わう——
そんな特別な体験を、ぜひこの一年の楽しみにしてみませんか?
2. 安納いもの魅力と家庭栽培のメリット
安納いもは、鹿児島県・種子島の特産として知られる、甘みと粘りが特徴の高糖度さつまいもです。
焼くとしっとりねっとりとした食感になり、糖度はなんと40度近くに達することも。
この圧倒的な甘さと濃厚な風味は、ほかのさつまいもとは一線を画し、「スイーツいも」と呼ばれることもあります。
そんな安納いもですが、実は家庭菜園でも育てやすい品種として知られています。
さつまいもは比較的病害虫に強く、日当たりと水はけの良い環境さえ整えば、初心者でも成功しやすい野菜のひとつ。
安納いもも同様で、ツルの管理や収穫のタイミングを押さえれば、家庭でも本格的な味に仕上げることができます。
さらに、家庭栽培ならではのメリットも魅力的です。
- 収穫したての新鮮な状態から、熟成によって味の変化を楽しめる
- 市販品よりも大ぶりで甘みの強いものが採れることもある
- 自分で育てた芋で焼き芋やスイートポテトをつくる喜びがある
とくに、子どもと一緒に育てたり、秋の収穫イベントとして楽しんだりと、家族で楽しめる家庭菜園野菜としてもおすすめです。
3. 栽培スケジュールと準備
安納いもを甘く、美味しく育てるためには、適切な時期にスタートすることと、事前の準備がとても大切です。
まずは、栽培の年間スケジュールと、必要な資材やスペースの目安を確認しましょう。
3-1. 栽培スケジュールの目安
作業内容 | 時期(目安) |
---|---|
苗の植え付け | 4月下旬〜6月上旬 |
生育管理 | 5月〜9月 |
収穫 | 9月下旬〜10月中旬 |
熟成 | 収穫後2週間〜1か月 |
安納いもは温暖な気候を好むため、地温が安定する4月下旬以降に植え付けを行い、夏を越えて秋に収穫する流れになります。
収穫した芋はそのまま食べると甘さが不十分なため、2〜4週間の熟成期間を経て食べるのがベストです。

3-2. 苗の入手と選び方
安納いもは、タネいもではなく「さつまいもの苗(ツル苗)」から育てるのが一般的です。
園芸店やホームセンター、ネット通販などで、4月〜5月にかけて苗が出回ります。
良い苗の選び方のポイント:
- 茎が太く、葉の色が濃くて元気なもの
- 長さは25〜30cm程度で節の間が詰まっている
- 葉がしおれていない(鮮度が高い)
3-3. 必要な道具と資材
ツル苗(安納いも用)
安納いもは種いもではなく、「ツル苗」から育てるのが一般的です。
ホームセンターや園芸店、通販サイトなどで4〜5月に購入可能です。
元気な苗を選ぶポイントは、茎が太く、葉がしおれていないものを選ぶことです。
培養土または地植え用の土
水はけのよい土が理想です。
プランター栽培ならさつまいも専用の培養土または野菜用の土(有機入り)を選びましょう。
地植えの場合は、耕して30cm以上の深さを確保し、堆肥・苦土石灰などで土を中和・改良しておくと安心です。
緩効性肥料(元肥)
安納いもは肥料を与えすぎるとツルばかり育つため、控えめの元肥が基本です。
8-8-8の化成肥料や、さつまいも用の肥料を植え付け前に少量混ぜ込んでおきましょう。
野菜・果実・米・茶・花・樹木と、すべての植物栽培にお使いいただける
天然植物活力液「HB-101」。
農園はもちろん、家庭菜園・ガーデニング・ベランダ園芸など、
植物を育てるすべての方におすすめです。

黒マルチ
地温を上げ、雑草の発生を抑え、水分を適度に保ってくれる優れものです。
植え付けの1週間ほど前に土の上に敷き、苗を差し込む穴だけをあけて利用します。
甘さと収量を高めたいなら、黒マルチはぜひ使いたい資材です。

スコップ・ジョウロ
苗の植え付けや収穫、軽い土寄せに便利なガーデニング用のスコップ。
また、乾燥が続く場合の水やりにはジョウロ(シャワー口付き)があるとやさしく水を与えられて便利です。
深型プランター(プランター栽培の場合)
プランターで育てる場合は、深さ30cm以上・容量40L以上のものを使用しましょう。
大きめのコンテナで1株につき1つが基本。
排水穴がしっかりあるものを選ぶことで、根腐れも防げます。
3-4. 栽培スペースと環境

安納いもは地中で芋が育つため、広さより“深さ”が重要です。
- 地植えの場合: 1株あたり30〜40cmの株間が目安。畝を立てて、水はけをよくするのがポイント。
- プランターの場合: 深さ30cm以上、容量40L以上の大型プランターが望ましい。1つにつき1株が適量です。
また、1日中よく日が当たる場所で育てることが、甘く育てる最大のポイントになります。
4. 栽培ステップ|甘く育てるための流れ
安納いもを「ねっとり甘く」仕上げるには、ただ植えて育てるだけでは不十分。
甘さを引き出すには、栽培中の管理がとても重要です。
ここでは、初心者でも実践しやすいように、安納いもの育て方を5つのステップに分けて解説します。
- 苗の向きは斜めに寝かせて植える(節から根が出て芋がつくため)
- 苗の下3〜4節を土の中に入れ、土をしっかり寄せて固定する
- 植え付け後は、たっぷりと水を与える
🌱 ポイント:黒マルチを使うと地温が上がり、成長が早まります。
マルチは植え付け前に張っておき、切れ目を入れて苗を差し込むようにします。
- 安納いものツルはどんどん伸び、地面に触れると根を張ってしまう
- 根を張ると栄養が分散して芋が育たなくなるため、「ツル返し」で対策する
- ツル返しとは、地面に接しているツルを軽く持ち上げ、土から浮かせる作業のこと
🍠 ツル返しのタイミング:植え付けから約1.5〜2か月後、伸びてきたツルが地面に接するようになったら実施します。
- さつまいもは乾燥に強く、湿気に弱い野菜
- 基本的に水やりは控えめでOK(雨だけで育つ地域もあるほど)
- 乾燥が続く場合は、朝にたっぷり与えるのが理想
- 追肥は基本的に不要だが、土が痩せている場合は6月頃に少量のリン酸肥料を与える
📌 肥料の与えすぎはツルばかりが茂り、肝心の芋が育たなくなる原因になるため注意!
- 収穫の2週間ほど前から水やりを控えることで、芋の糖度と保存性がアップ
- 土が湿っていると収穫時に芋が傷みやすくなるため、乾燥気味に仕上げるのがポイント
☀️ 収穫直前は、晴れが続く日を狙うとベスト。天気予報もチェック!
- 葉が黄色くなり、ツルがやや元気を失ってきたら収穫のサイン
- スコップで周囲を軽く掘り起こしながら、芋を傷つけないように丁寧に掘り出す
- 掘り出した芋は、日陰で2〜3日乾かしてから熟成に入る
このように、安納いも栽培は「ツル返し」「水やりを控える」「肥料は最小限」といった、独特のコツがいくつかあります。
でも、それを守れば、家庭でも十分に甘くて美味しい安納いもを収穫できます。

5. 収穫のタイミングと掘り方のコツ
安納いもを甘く美味しく味わうためには、正しいタイミングで、丁寧に掘り出すことが大切です。
早すぎれば芋が太りきらず、遅すぎれば寒さや土の湿気で腐るリスクも。
ここでは、失敗しない収穫の見極め方と、掘り方のポイントを解説します。
5-1. 収穫時期の目安
安納いもは、植え付けからおよそ120〜130日後に収穫のタイミングを迎えます。
地域差はありますが、関東以南では9月下旬〜10月中旬ごろが一般的な収穫期です。
以下のようなサインが出ていれば、収穫のタイミングです:
- 葉が黄色くなってきた(枯れ始めた)
- ツルの勢いが落ちてきた
- 試し掘りした芋が十分に太っている(直径5cm以上)
収穫は必ず晴れた日を選び、土が乾いている状態で行うのがベスト。
雨上がりや湿った状態で収穫すると、芋の表面が傷みやすく、保存性が低下します。
5-2. 掘り方のコツ
安納いもは皮が薄く、傷がつきやすいため、優しく・丁寧に掘ることが何より重要です。
掘り方の手順:
- 株の周囲を20〜30cmほどスコップで大きめに掘り起こす
- 土をそっと手で崩しながら、芋の位置を確認
- 手で包み込むように、1つずつゆっくり掘り上げる
- 傷つけた芋や折れた芋は別にして、早めに食べるようにする
5-3. 収穫後のひと手間「乾かし」
掘り上げた芋は、すぐに食べずに、風通しのよい日陰で2〜3日ほど乾かす(乾燥させる)のがおすすめです。
これにより、表皮が乾いて病気に強くなり、保存性も高まります。
⚠ 直射日光に当てると芋が傷んだり、内部が変色することがあるため、日陰 or 室内での陰干しが基本です。
掘りたての安納いもは、まだ糖度が低くホクホク感も強めですが、熟成させることであの“ねっとり甘い”味わいに変化していきます。
6. 甘さを引き出す熟成方法

掘りたての安納いもを食べて、「あれ?意外と甘くない…?」と感じたことはありませんか?
実は、安納いもは“収穫してすぐ”よりも、“収穫後にしっかり熟成させた”ほうが格段に甘く美味しくなる品種なんです。
ここでは、ご家庭でできるシンプルな熟成方法と、甘さを引き出すための注意点をご紹介します。
6-1. なぜ熟成が必要なの?
安納いもは、収穫直後にはまだデンプンが多く、甘さは控えめです。
それが時間とともにデンプンが糖に変わり、ねっとり感と甘みが増していくのがこの品種の特長。
収穫後すぐに食べるとホクホクしていますが、熟成することであの蜜のような甘さが生まれます。

6-2. 熟成の基本条件
安納いもを熟成させるためには、以下のような環境が理想です:
- 温度:13〜15℃前後(常温の涼しい部屋)
- 湿度:やや高め(乾燥しすぎないように)
- 期間:2週間〜1か月ほど
- 直射日光は避け、風通しの良い日陰に置く
6-3. 自宅でできる熟成の方法
安納いもの熟成は、以下の手順で簡単に行えます。
① 収穫後、日陰で2〜3日乾かす
土を軽く落とし、日陰で表面を乾かす(陰干し)ことで保存性がアップします。
② 新聞紙にくるんで段ボールへ
1本ずつ新聞紙で包み、密閉しすぎない段ボール箱に入れて保管します。
段ボールの中に空気がこもらないよう、上部を軽く開けておくとカビ予防になります。
③ 室内の涼しい場所で2週間〜1か月置く
押し入れやリビングの隅など、寒すぎず乾燥しない場所がおすすめ。
期間をおくことで、芋の甘さと食感が大きく変わります。
6-4. 食べごろの目安とおすすめの食べ方
- 収穫から2〜3週間後:甘みが増し始め、焼き芋向き
- 1か月後〜:ねっとり感が強まり、スイーツにも最適
おすすめの調理法は、なんといってもアルミホイルで包んでオーブンでじっくり焼く“焼き芋”スタイル。
蜜がにじみ出るほどの甘さに感動するはずです。
7. まとめ|甘さも感動も家庭で味わえる安納いも
安納いもは、ただ甘いだけではなく、“育てる楽しさ”と“食べる感動”の両方が味わえる特別なさつまいもです。
焼きたての蜜があふれるような食感と香りは、スーパーで手に入れるだけでは味わえない、育てた人だけのごほうび。
本記事では、安納いもを甘く育てるためのコツとして、
- 栽培時期と適切な植え付け方法
- ツル返しや水やりのポイント
- 収穫の見極め方と丁寧な掘り方
- 甘さを最大限に引き出す熟成方法
などを詳しくご紹介しました。
必要な道具も多くなく、プランターでも育てられるため、家庭菜園初心者にもぴったり。
秋に掘り出した芋を、じっくり熟成させて迎える焼き芋シーズンは、季節の楽しみが何倍にも広がる体験になります。
ぜひこの機会に、あなたの暮らしに“甘い幸せ”を届けてくれる安納いも栽培に挑戦してみてください。
育てるほどに楽しみが増し、掘り出した瞬間の感動は、きっと忘れられないものになるはずです。
家庭菜園に挑戦してみたい方へ|シェア農園という選択肢
「野菜や果物を育ててみたいけど、庭や畑がない…」
そんな方には、区画を借りて野菜を育てられる“シェア農園“がおすすめです。
必要な道具も揃っていて、栽培のアドバイスを受けられる農園もあるので、初心者でも安心して始められますよ。