1. はじめに|肥料がキュウリの生育を左右する!

キュウリは、家庭菜園でも人気の高い夏野菜のひとつ。つるがぐんぐん伸びて、収穫までのスピードも早く、次々と実がなるため「育てる楽しみ」と「食べる喜び」を両方味わえるのが魅力です。
ですが、そんなキュウリ栽培で意外とつまずきやすいのが、「肥料の与え方」です。
キュウリは「肥料食い」と言われるほど栄養をよく吸う植物で、与えるタイミングや量、肥料の種類を間違えると、実がつかなかったり、株がすぐに弱ってしまったりすることもあります。逆に、正しく施肥ができれば、家庭菜園でもびっくりするほど立派なキュウリを次々に収穫することが可能です。
この記事では、そんなキュウリ栽培初心者の方に向けて、「どんな肥料を使えばいいの?」「いつ・どれくらい与えるの?」「失敗しないコツは?」といった疑問に丁寧にお答えしていきます。元肥と追肥の違いから、頻度の目安、よくある失敗とその対策まで、キュウリ栽培の肥料管理をまるごと解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。

2. キュウリ栽培に適した肥料の種類とは?
キュウリを元気に育てるには、肥料の種類をきちんと選ぶことが重要です。ただやみくもに肥料を与えるのではなく、生育段階や栽培環境に合わせて使い分けることが、実つきや株の健康を左右します。
肥料は大きく分けて「有機肥料」と「化成肥料」の2種類があります。
有機肥料は、油かす・鶏ふん・堆肥など自然由来の成分でできており、ゆっくりと効いていくのが特徴です。土壌改良の効果もあり、植え付け前の元肥(もとごえ)としてよく使われます。家庭菜園では、やわらかくふかふかした土をつくるために有機肥料を活用する方も多く、環境に配慮した栽培を目指す人にもおすすめです。
一方で、化成肥料は、窒素・リン酸・カリウムといった必要な栄養素がバランスよく配合された肥料です。即効性があり、成長が鈍ったときや、実がつき始めた頃に追肥(ついひ)として与えると効果的です。粒状タイプと液体タイプがあり、液体肥料は水やりと一緒に使えて手軽なのも魅力です。
キュウリに必要な三大栄養素は以下の通りです。
- 窒素(N):葉や茎の生長を助ける。初期のつる伸ばしに必要
- リン酸(P):花のつきや実の肥大を促す。開花期以降に特に重要
- カリウム(K):根の発達や病気への抵抗力を高める。収穫期の株の体力維持に役立つ
市販の肥料では、「野菜用」や「果菜類(実のなる野菜)用」と表示されているものを選べば、これらの成分バランスが整っており安心です。初心者の場合は、「緩効性(かんこうせい)肥料」や「液体肥料」をうまく使い分けることで、管理がぐっと楽になります。


◆ 初心者にも使いやすい!キュウリ栽培におすすめの市販肥料
市販されている肥料の中には、キュウリをはじめとする果菜類(実を食べる野菜)にぴったりなものが数多くあります。特に、家庭菜園向けに配合バランスが整えられた肥料を選ぶことで、失敗のリスクをぐっと減らすことができます。
ここでは、初心者にも扱いやすく、園芸店やホームセンターで手に入りやすいおすすめ肥料をいくつかご紹介します。
①フローラ「HB-101」

野菜・果実・米・茶・花・樹木と、すべての植物栽培にお使いいただける天然植物活力液「HB-101」。
農園はもちろん、家庭菜園・ガーデニング・ベランダ園芸など、植物を育てるすべての方におすすめです。

②花ごころ 「夏野菜の肥料 」

その名のとおり、トマトやキュウリなど“実がなる野菜”に最適化された配合の肥料です。リン酸とカリウムが多めに含まれており、実の肥大と甘みの向上に効果的。元肥にも追肥にも使えます。
③東商 「有機100% 野菜の肥料」

サカタのタネが販売する初心者向け肥料で、粒状の扱いやすいタイプです。水やり後にゆっくり溶け出すため、肥料焼けしにくく、長く効いてくれるのが特徴です。野菜全般に使えるので、キュウリ以外にも兼用したい方におすすめです。
市販の肥料は、「野菜用」「果菜用」などの表記を目安に選べば、基本的にキュウリにも適しています。ただし、窒素だけが多すぎる肥料は葉ばかりが茂って実がなりにくくなることもあるため、N-P-K(チッソ・リン酸・カリウム)のバランスを確認しておくと安心です。
3. 肥料を与えるタイミングと頻度

キュウリ栽培では、「いつ肥料を与えるか」=タイミングと、「どのくらいの間隔で与えるか」=頻度がとても重要です。キュウリは生育が早く、実をどんどんつけるぶん、栄養の消費も激しい野菜。適切なタイミングで適量の肥料を与えることで、長く安定した収穫を楽しむことができます。
ここでは、キュウリの生育段階に合わせた施肥の流れを、わかりやすくステージ別に紹介します。

3-1. 元肥(植え付け前)
植え付けの1〜2週間前に、あらかじめ土に混ぜ込んでおく肥料を「元肥(もとごえ)」といいます。初期の根張りやつるの伸びを支える大切な準備肥料です。
- 使用肥料:有機肥料(堆肥・油かす・鶏ふん)または緩効性化成肥料
- タイミング:定植の1〜2週間前に、耕した土にしっかり混ぜ込む
- 量の目安:培養土10Lあたり約30〜40g(製品により異なる)

3-2. 初期追肥(植え付け2〜3週間後)
元肥だけでは足りなくなるころ、最初の追肥を行います。つるが勢いよく伸び始め、葉が大きくなってきた頃が目安です。
- 使用肥料:粒状の化成肥料(チッソ多め)または液体肥料
- 頻度:2〜3週間に1回(液体肥料の場合は週1回程度)
- ポイント:株元から10〜15cm離した場所に施す。根に直接当たらないように注意

3-3. 開花・結実期(つぼみ〜実のつき始め)
つぼみがつき、実がなり始めると、実の肥大を支えるリン酸とカリウムが特に重要になります。この時期は養分をどんどん吸収するため、追肥の頻度をやや高めにします。
- 使用肥料:リン酸・カリウム多めの化成肥料や液体肥料
- 頻度:週1回〜10日に1回(液肥なら週1、水肥なら毎回薄めて)
- ポイント:水やりとセットで肥料をなじませると吸収が良くなる

3-4. 収穫中期〜後半(7月〜8月)
実を次々と収穫していくと、株も疲れてきます。ここでしっかり肥料を補っておかないと、実が小さくなったり、変形したりする原因に。 株の体力を維持するための“補強肥料”が必要です。
- 使用肥料:即効性のある液体肥料や配合肥料
- 頻度:週1回ペースで継続
- ポイント:実の数が減ったと感じたら肥料切れのサイン。葉の色やつるの伸びを観察しながら調整を
生育ステージ | 肥料の種類 | 頻度 |
---|---|---|
植え付け前 | 有機・緩効性肥料 | 1回(定植前) |
植え付け2〜3週後 | 化成肥料・液体肥料 | 2〜3週に1回 |
開花・結実期 | 液体肥料 | 週1〜10日に1回 |
収穫中期以降 | 液体肥料 | 週1回ペースで継続 |
肥料を「与える」こと以上に大切なのは、株の状態を見て調整すること。 葉の色が濃すぎる・薄すぎる、実がつかないなどのサインを見逃さず、柔軟に対応していくことが、元気なキュウリを長く育てるコツです。
4. 正しい肥料の与え方【プランター/地植え別】
キュウリを元気に育てるには、「いつ何を与えるか」だけでなく、「どのように与えるか」も非常に重要です。肥料の与え方を間違えると、せっかくの栄養も十分に吸収されず、株を弱らせてしまうことがあります。
ここでは、プランター栽培と地植え栽培それぞれに合った施肥のポイントを解説します。
◆ プランターで育てる場合
プランター栽培はスペースを選ばず気軽に始められる反面、土の量が限られているため、肥料が流れやすく、効果が持続しにくいという特徴があります。こまめな追肥と、根を傷めない施し方がポイントです。
与え方のコツ:
・肥料は株元から10~15cmほど離れた場所に、円を描くようにまく
・液体肥料は水やりと兼ねて与えると手間も減り、吸収もスムーズ
・土の表面に肥料をまいた後は、手で軽く混ぜるか、薄く土をかぶせておく
・プランター底に鉢底石を入れて排水性を確保しておくと、肥料の流れすぎも防げる
注意点:
・肥料を根に直接当てないよう注意(肥料焼けの原因になります)
・雨ざらしの場所に置くと肥料が流れやすいため、軒下やカバー付きの場所で管理すると安心です
◆ 地植えで育てる場合
地植えは、土の量が多く肥料の効きが安定しやすい反面、広く根が張る分、肥料の施す位置と深さが重要になります。土の状態や排水性に合わせて、ゆっくり効く肥料と即効性の肥料を上手に使い分けましょう。
与え方のコツ:
・元肥は植え付けの1〜2週間前に土全体に混ぜ込んでおく
・追肥は株元から30cmほど離れた場所に浅い溝を掘って施すと効率よく吸収される
・粒状肥料の場合は施した後、上から軽く土をかぶせて水やりでなじませる
・土壌改良も兼ねて、堆肥や腐葉土を年1回程度入れておくと土の栄養バランスが整う
注意点:
・肥料が効きすぎると葉ばかり茂って実がつかないことがあるため、与えすぎには注意
・雨が続くと肥料が流れてしまうため、追肥のタイミングは天候も考慮する

◆ 固形肥料と液体肥料の使い分け
肥料タイプ | 特徴 | 適した使い方 |
---|---|---|
固形肥料(粒状) | ゆっくり長く効く | 元肥・定期的な追肥におすすめ |
液体肥料 | すぐ効くが持続性は低い | 即効性を求める場面やこまめな追肥に最適 |
どちらの栽培方法でも、「肥料は株元から離して施す」「土となじませる」「定期的に観察して調整する」ことが成功のカギです。次の章では、肥料によって起こりがちなトラブルとその対策について詳しく見ていきましょう。
5. 肥料トラブルに注意!よくある失敗と対策

キュウリは肥料をよく吸う「肥料食い」の野菜ですが、それだけに肥料の与え方を間違えると、思わぬトラブルにつながることがあります。「葉がやたらと茂るけど実がならない」「実が小さい」「全体的に元気がない」などの悩みの原因が、実は肥料の量やバランスにあるケースは少なくありません。
ここでは、家庭菜園でよくある肥料トラブルと、その対処法を紹介します。
トラブル1:肥料の与えすぎ(過肥)
症状:
・葉の色が濃すぎてツヤが強い
・つるや葉ばかり育って実がつかない
・根が傷み、株全体がしおれてくることもある
原因と対策:
窒素を含む肥料を多く与えすぎると、つるや葉の生育ばかりが旺盛になり、肝心の花や実の成長が抑えられてしまいます。また、根に直接肥料が触れると「肥料焼け」を起こし、株が弱ってしまうことも。
このような場合は、まず追肥をいったん中止し、水やりで土の中の肥料分を流して薄めることが効果的です。プランター栽培なら、表土を少し入れ替えるのもひとつの方法です。今後は、緩効性肥料や液体肥料など、効き方を調整しやすい肥料を少量ずつ与えるようにしましょう。

トラブル2:肥料不足(肥料切れ)
症状:
・葉の色が全体的に薄くなる
・花が少ない、または実が小さい・細長い
・成長が止まったように感じる
原因と対策:
キュウリは成長が早く、実を次々につけるため、短期間で土の栄養を使い切ってしまうことがあります。特にプランター栽培では、肥料成分が流れ出やすく、気づかないうちに「肥料切れ」になることも。
対策としては、速効性のある液体肥料を週1回のペースで補給してみましょう。株が回復してきたら、緩効性肥料などで徐々に栄養を補っていくと、安定した生育が期待できます。
- 肥料は与えすぎず、こまめに少しずつ補うのが基本
- 株の様子をよく観察することが最も確実なトラブル予防法
- 葉の色・つるの伸び・実の形や数をチェックして、早めの対応を心がけましょう
肥料トラブルは、誰にでも起こりうるものです。でも、株の状態に気づいて正しく対応すれば、そこから元気を取り戻すことも十分可能です。
6. より多く・長く収穫するための+αの工夫
肥料を正しく与えるだけでもキュウリはよく育ちますが、さらにひと工夫を加えることで、収穫量を増やし、収穫期間をグッと長く伸ばすことができます。ここでは、家庭菜園で実践できる+αの栽培テクニックを紹介します。
① 整枝・摘芯(てきしん)で栄養の流れをコントロール
キュウリはつるをどんどん伸ばして成長するため、放っておくと葉が混み合い、栄養が分散して実つきが悪くなります。整枝と摘芯で育てる枝・切る枝を選び、株全体のバランスを整えることで、栄養がしっかり果実に行き渡るようになります。
- 主枝は支柱に沿ってまっすぐ伸ばし、子づるは2~3節目まで残して摘芯
- 混み合っている葉や古い葉はこまめに取り除き、風通しを確保する
- 実がついた後の側枝は整理し、株に余計な負担をかけないようにする
② 支柱・ネットを使って「縦に育てる」
キュウリは地這い(じばい)でも育てられますが、縦に誘引して育てた方がスペース効率も良く、実の管理もしやすくなります。また、風通しや日当たりが良くなるため、病害虫の予防にもつながります。
- 主枝を支柱やネットに沿わせて誘引し、まっすぐ上に伸ばす
- 成長に合わせてひもでゆるく固定し、折れや絡まりを防ぐ
③ マルチングや敷きわらで根元環境を安定させる
夏の強い日差しや雨による泥はねは、キュウリの根や株にダメージを与える原因になります。地温と湿度を一定に保ち、根のストレスを軽減することで、収穫期の後半まで元気に育てることができます。
- プランターならバークチップや草木マルチ、地植えなら敷きわらを使うのがおすすめ
- 雨天時は泥はねを防ぎ、晴天時は乾燥防止に役立つ

④ 実を早めに収穫して株の負担を減らす
「もう少し育ててから…」と思いがちですが、実を長くつけたままにすると、株に負担がかかって他の実の成長が遅れてしまうことも。適期を逃さず、こまめに収穫することが、結果的に収穫量アップにつながります。
- 実が20cm前後になったら収穫のサイン
- 1〜2日おきに状態をチェックして、少し早めの収穫を意識すると◎
7. まとめ|正しい施肥でキュウリ栽培をもっと楽しく!
キュウリは育てやすい野菜と思われがちですが、実をたくさん収穫するためには「肥料の与え方」がとても重要です。与えるタイミング、種類、量のバランスをきちんと理解すれば、家庭菜園でも驚くほど立派なキュウリが育ちます。
この記事では、キュウリ栽培に適した肥料の種類から、生育段階ごとの施肥タイミング、プランターと地植えそれぞれの与え方、そしてよくあるトラブルとその対処法、さらに収穫量を増やすための+αの工夫までを詳しくご紹介してきました。
ポイントは、「こまめに観察し、必要なときに必要な栄養を届ける」という姿勢です。葉の色や実のつき方など、ちょっとした変化を見逃さずに対応していくことで、キュウリ栽培の腕前もどんどん上達していきます。
正しい施肥と丁寧な手入れを続ければ、ベランダや庭先でも、まるでプロが育てたような立派なキュウリが収穫できるはずです。ぜひ今回の内容を参考に、あなたのキュウリ栽培をもっと楽しく、実りあるものにしていきましょう!
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